ポジティブで聡明な、都合のいい女。 その3

その2から続き

 

喜久子は物事の決断をするまでが早いし、決めたら周りが見えなくなるタイプで、頑固さを持ちあせている。
仕事では曲ったことが大嫌いで、歯に衣着せぬものいいが気持ちいい、
そんな彼女が訳あり彼氏と3年も続いてるのだから男女の惚れた腫れたはわからない。

 

本人が聞くと怒の感情をぶつけてくるかもしれないが、
綺麗なバラというよりはたんぽぽやコスモスのように目一杯と真っ直ぐに茎を伸ばして、太陽に向かって満面の笑みを浮かべているようで、
一輪の花、ではなく周りにはコスモスが同じように咲いているのに、なぜか目に留まる、そんな不思議な魅力のある女性だ。
僕は喜久子から溢れ出ているパッションや、バイタリティがそれなのだと感じている。

 

時間もほどほどにお会計を済ませて店をでると、いつも以上に酔っぱらっている喜久子を気にしつつ歩く方向を確認する。
「ねぇ、ちょっと歩かない?」
喜久子が言う。歩くことは嫌いではないが普段そんなことを言わない彼女が言うことに驚いた。
「いいよ。でもどこいくの?」
「知らない。その辺じゃない?」
「知らないってなんだよ。それじゃぁ、ただの散歩じゃんか。」
「いいから行くよ。」

 

出口のない迷路に自分たちから入っていくようといえば少し救いようがあるかもしれない。
海や観光地なら歩くだけでも景観を楽しめそうなものではあるが、いつもの街をブラブラしたことはない。
人、いや生物は光のある方へ向かいたくなるものだということに今更ながら気がついた。
僅かな温もりを確かめ合うかのように人は人がいるところに集まるのだろう。


人通りが多いところを歩いていると、客引きの男性、女性がたくさんいる。
男性は居酒屋系と思われるチラシを持ち、女性たちは水商売の雰囲気がでている。
「2軒目どうですか〜。お安くしますよ。」
「一杯どうですか〜。」
普段なら何も気に留めない声掛けも心のやり場に困っているいまであれば、
救いを求めるように吸い寄せられる。喜久子はそんな客引きを避けるように身を寄せてきつつ、腕に手を回してくる。
「こうしたほうがナンパもされないし、いいよね。」
「それはそうだけど。」はっきりしない返事をしながらその状況を受け入れつつ、
繁華街も真ん中を過ぎようとしていた。

続く。